衝撃波による食品加工プロジェクトの活動報告

機械知能システム工学科 井山 裕文

1.はじめに

衝撃波とは、高い瞬間的に発生する圧力波であり、伝播する媒体の音速を超えて移動する場合の圧力波である。衝撃波が物体に作用すると、まず高い圧力作用を受けるが、その後膨張波が通過するために、極めて高い圧力作用の後に負となる圧力作用となり、物体に大きな影響を及ぼすものとなる。また、圧力媒体の密度変化により、入射する波と反射する波、圧縮波と膨張波の作用が混在する。これらの作用により、特殊な作用をもたらすことになる。衝撃波の発生源となるものは、爆薬や高電圧放電といったものである。これらの爆発や放電時に瞬間的に水や空気などの粒子に運動エネルギーを与え、瞬間的高圧力を得ることができる。 これまで衝撃波を利用した加工は金属加工に関するものが主であった。衝撃波の極めて高い圧力を利用して、異種金属同志を接合する爆発圧着や金属板を高速飛翔させて型成形を行う、爆発成形法などが以前より開発が進められており、ヨーロッパ、ロシア、中国、インドなどでも継続して研究が行われている。 一方、近年、衝撃波を活用した新しい研究も盛んに行われている。特に注目すべき研究としては、食品加工がある。衝撃波を水中で発生させ、これらを食品に作用した場合、軟化、咀嚼性の向上、粉砕、抽出作用の向上などの処理が可能となっている。この研究は沖縄高専、水産大学校との共同研究としてこれまで行われてきた。本プロジェクトはこのような食品加工への応用からさらなる発展を行うことを目的としている。

2.処理方法

容易に衝撃波を発生させる方法として、爆薬を利用する。図1はそのセットアップの写真である。紐状の爆薬を一直線に張り、その周囲に適当な間隔をあけて処理対象物をセットする。衝撃波の発生源と対象物の距離により、作用する最大圧力を調整することができる。近年では、爆薬ではなく水中で高電圧で放電させることで衝撃波を発生させる装置を開発している。図2は大根を処理した後の状態である。処理後、大根が軟化し図のように簡単に絞れる状態までになった。リンゴを処理した場合、図3のように直接ストローを挿して果汁を飲むことが可能となる。リンゴの処理後の硬度測定を行った結果を図4に示す。横軸は処理時の衝撃波の最大圧力を示している。0MPaとは未処理であり、このときの硬度を100としている。

6月20日~21日:第8回産学官連携推進会議(主催:内閣府、総務省、文部科学省、経済産業省ほか。国立京都国際会館)にて、高専機構知財本部のブース「国立高専の食品関連技術(全国の特産物と高専技術のコラボ)」で、本学科と熊本県八代地域振興局とが連携した「廃棄トマトの有効利用~地域特産物に付加価値を~」をテーマに、特許出願を行っている「青トマト緑色色素の安定化技術とその利用技術」が紹介された。


図1.衝撃処理セットアップ


図2.処理後の大根


図3.リンゴジュース


図4.処理後のリンゴの硬度

3.今後の展望

これまでの主な成果による衝撃波の食品処理に対する効果を表1にまとめる。これらの成果より、様々な食品加工において、従来の食品加工技術に変わって経済的な面での解決、非加熱処理であるので、栄養価の向上などの付加価値としても大きなメリットとなる可能性がある。近年はこの処理方法に最適な装置開発とその設計のための数値シミュレーションや衝撃波の伝播過程の計測、新しい衝撃波発生源の開発を行っている。本プロジェクトにおいては、この技術を活用し、熊本県内の農水産物などの処理を行い、地域活性化に繋げるよう努力する。

表1.衝撃波による食品処理の効果
得られる効果 食品サンプル例 特筆すべきこと
軟化 パイナップル 可食部が2倍に増加
搾取性向上 りんご 片手で搾ることが可能となる
浸透性向上 大根 一夜漬けならぬ一瞬漬けが可能に
抽出性向上 コーヒー豆 ハイスピードな水出しコーヒーが可能に
粉砕 茶葉 摩擦熱無しで粉砕可能に