食品加工の技術開発プロジェクト

プロジェクト代表 井山 裕文

1. はじめに

現在、生物化学システム工学科において、食品加工に関連する研究が目立ってきており、その成果が様々なところで発表されています。一方、機械知能システム工学科、技術センターにおいても食品の付加価値を高めるための処理装置や加工装置の開発が行われており、これらをひとつのプロジェクトとしてまとめることで、その相互作用によって更なる新しい技術開発や発展が期待できるものと考えています。主な目標は下記の2つの項目を掲げており、これらの目標達成により熊本県内外および地元地域の活性化に貢献できるように本プロジェクトは取り組んでいます。

①地域農水産物およびその未利用品を利用した加工食品の開発:熊本県は全国的に農産物や水産物の出荷が目立ってきていますが、加工品としての出荷は少なく、生産者をはじめ熊本市、八代市およびその他の自治体や農水産事業推進関係でもこの点を問題とされています。これらの問題点に貢献できるような技術開発を行っています。農産物では、規格品外となった部位や単体そのものが大量に廃棄されており、これらを商品化することで農業を支援できる技術開発を目指しています。この取組みにおいては、生産者、自治体関係者より期待がもたれており、現在八代地域の生産者から直接依頼されている課題も多くあります。

②熊本高専ブランド商品の開発:近年、地域の活性化のため、特産物をブランド品として販売することで、成功している事例が多くあります。ここでは、「熊本高専」の名称を広め、地域または九州の拠点としてのアピールできるような熊本高専ブランドの製品開発を目指しています。

2. プロジェクトメンバー

本プロジェクトメンバーとして、既に商品加工の実績のある下記の生物化学システム工学科、機械知能システム工学科、技術センターの教職員が参加しています。

・生物化学システム工学科  〈教授:種村公平・木幡進  准教授:弓原多代・濱邊裕子〉
・機械知能システム工学科  〈教授:河﨑功三  准教授:村山浩一・井山裕文〉
・技術センター       〈技術専門員:吉田修二・下田誠 班員:前田有希・久保姉理華〉

以上11名

3. 研究成果と今後の展望

本プロジェクトにおいて、現在、以下8テーマを分担して行っています。

①衝撃波による食品加工装置の開発(井山・村山・吉田・下田):衝撃波を利用した食品加工技術はその有効性から下記の②~⑦の研究テーマにも応用できるものと考えています。今年度は装置開発と最適化技術の開発を行っており、本校の第1号機が完成いたしました。この装置では食品の軟化、搾取性の向上、抽出性の向上、粉砕処理、液体浸透処理などが容易となります。本装置を利用して熊本県で栽培される農産品廃棄物の加工を行い、有価物としての製品化を目指しています。

②農水産物を材料にした煎餅加工装置の開発(河﨑・井山・吉田・下田):現在、米粉を原料としたアイスクリームカップを作ることが可能です。特徴として圧力、水分などを加減でき、煎餅の製品化は容易に作ることができます。これに魚類・甲殻類、農産物を混合させ、製品開発・生産を行うことを目指しています。

③生はちみつの抗菌性に関する研究(弓原・井山):熊本は養蜂が盛んな地域です。ここでは、ただ食品とするだけでなく微生物への影響(抗菌性・増殖力付加など)を調査し、製品開発を行っています。

④豆腐の味噌漬けの付加価値の探索(弓原・濱邊):熊本特産の豆腐の味噌漬けについては長期保存した豆腐の科学的データが殆どありません。近年着目されている機能性ペプチドも含むのではないかと考えられており、ここでは長期熟成した味噌付け豆腐の定量・定性分析を行なっています。

⑤廃棄サラダ玉ねぎの非糖化バイオエタノール製造(弓原・濱邊・井山・下田):芦北産「サラダ玉ねぎ」は糖度および水分含量が多く腐り易い為、規格外品は一般の玉ねぎのように保蔵できず廃棄されています。我々はこの廃棄「サラダ玉ねぎ」を有効利用できないかと考えており、高収率バイオエタノール生産のための条件設定を検討されています。非糖化条件でのバイオエタノール生産は確認済みです。

⑥閉鎖型養殖・飼育装置システムの開発(木幡・種村・井山・吉田・下田):稚鼈の養殖を対象とし、実用化に向けた閉鎖型養殖システムの開発を行っています。ここでは省エネルギー化および餌や糞尿などから発生する亜硝酸などを分解できる処理装置を含めたシステムを製作しています。閉鎖型とは排水をしない循環型のシステムです。

⑦晩白柚を利用した新商品開発(濱邊・木幡・弓原・井山・村山・前田・久保):八代市特産の晩白柚の有効活用と機能性成分の抽出および分析を行っています。果皮および花から香気成分の抽出を行い、化粧品への利用を検討しています。晩白柚石鹸は既に市販されています。果肉を簡単に分離する方法が確立できれば、焼酎、サイダーの原料にできます。また、皮むき機においては既に技術センターで製作されていますので、これを利用して皮と実に分けることが可能です。

⑧高速処理を目的としたイオン交換体の開発(濱邊・木幡):工場廃液など環境汚染に繋がる排水処理するための技術開発であり、応用することで有害金属の除去、有価金属の回収、アミノ酸などの食品中の有効成分の分離を行うことができます。食品処理後の廃液などの処理も可能となっています。
今年度は本プロジェクトの発足と各研究テーマの現状報告を行い、それぞれの技術の相互的な協力体制を確立しました。今後の成果発表については、各学会における研究発表や展示会などで積極的に公表していく予定であります。また、高専機構全体での取り組みとして、衝撃波・パルスパワー研究会、地域資源を活かした機能性食品研究会(仮称)などの研究会が発足しています。本プロジェクトの発展のために、これらのネットワークを利用しながら研究開発を行い、更なる発展が期待されています。

プロジェクト成果報告会 衝撃波による食品加工装置 玄米晩白柚せんべい 晩白柚石けん

 

4. 主な研究業績(平成23年度)

    1. Yoshikazu HIGA, Shuhei SHINZATO, Tatsuhiro TAMAKI, Hirofumi IYAMA and Shigeru ITOH,”A Computational Simulation of the Shock Wave induced by Underwater Gap Discharge”,MULTIPHYSICS 2011, Barcelona, Spain, (2011.12), pp.35.
    2. 伊東繁,渡邉敏晃,井山裕文,食品加工における衝撃波処理の環境性能,2011国際食品工業展,2011年6月7日~10日,東京ビッグサイト.
    3. 田中彩千乃,木幡進,オゾン水と炭素繊維を用いた排水処理,第17回高専シンポジウムin熊本講演要旨集,平成24年1月28日,熊本,p365.
    4. 浜辺裕子,野田美香,久保姉理華,前田有希,木幡進,濱田泰輔,八代特産晩白柚の芳香成分,第17回高専シンポジウムin熊本講演要旨集,平成24年1月28日,熊本, p.374.
    5. 早川瑠璃,佐伯知香,大島賢治,浜辺裕子,フェニルボロン酸基を有するグルコース吸着ポリマーの合成と評価,第17回高専シンポジウムin熊本講演要旨集,平成 24年1月28日,熊本,p.375.