熊本の『ものづくり』を担うエンジニア育成のための3次元CAD設計講座と製造工程へのCAD/CAM活用講座プロジェクトの活動報告

機械知能システム工学科 田中 禎一

1.はじめに

熊本高等専門学校八代キャンパスでは3次元CAD/CAE/CAM技術を活用した社会人向け人材育成事業[1]を平成18年度から継続的に実施している。本事業は、経済産業省、中小企業庁、及び全国中小企業団体中央会の支援を受け、八代商工会議所が管理団体、本校の地域イノベーションセンター、機械知能システム工学科、技術センター(実習工場)、及びICT活用学習支援センターが、講師及び機材・施設等を提供するかたちで、地元企業の機械設計技術者の育成と確保を目標に実施しているものである。図1に、本事業の実施体制を示す。


図1.実施体制

2.平成22年度「ものづくり分野の人材育成・確保事業」

八代地域は、従来、紙パルプ・化学・食品等を中心とする企業群が主で、機械関連企業もプラント設備や装置を対象にしたところが多く、最新のCAD設計技術に対するニーズもそれほど高いものではなかった。しかし、近年、中小の地場関連企業を中心に、機器の設計・製造工程における更なるコストダウンや、新製品の開発スケジュール短縮に、3次元CAD設計が有効であることが認識されてきており、3次元CAD/CAE/CAMを設計・製造現場に導入しようとする機運も高まっている。そのような中で、本事業に関心を寄せる地場企業は多く、3次元CAD講座とそれに深く関係するCAE講座及びCAM講座には、毎年、多数の参加希望があり、受講生の満足度も高い。
本年度は、昨年度に続き、全国中小企業団体中央会の「平成22年度ものづくり分野の人材育成・確保事業」に応募して、その支援を受けるかたちで実施した。内容は、昨年度のテーマであった「3次元CAD/CAE/CAM技術をより実務的な部品製造工程に活かせる人材育成」を更に発展させると共に、3次元CADを初めて学習する人もその導入が容易にできるように、「3次元CAD/CAE/CAM技術の基礎力養成とそれを部品製造工程において効果的に活用できる人材育成」とした。
具体的には、3次元CAD/CAEの基礎的内容とそれを部品製造設計工程に利用する方法を学習する「3次元CAD設計講座」、及び3次元CAD/CAMを中心にその基礎的内容及び実際の部品製造工程を学習する「製造工程へのCAD/CAM活用講座」の2本立てとして実施した。
表1に、3次元CAD設計講座のカリキュラム、及び製造工程へのCAD/CAM活用講座のカリキュラムの概要を示す。
本カリキュラムの特徴は、3次元CAD設計システムを使った作図設計ができるだけではなく、3次元設計データを基にした解析を行い、さらにこれらを実験データや現場の知見等と突合せ、より良い設計にフィードバックしていく工程をPBL実習を通して習得できる点である。 

表1.3次元CAD講座カリキュラム
熊本の『ものづくり』を担うエンジニア育成のための3次元CAD設計講座と製造工程へのCAD/CAM活用講座

3.おわりに

今年度の受講者数は、前半の「3次元CAD設計講座」が34名、後半の「製造工程へのCAD/CAM活用講座」が21名と好調で、うち7名は女性の受講者であった。この分野で3次元CADがより浸透してきたことが感じられた。講師は、機械知能システム工学科及び技術センターの計14名の教職員が担当した。講座期間中に実施したアンケートからも、充実感が高く、講座をサポートする学生TA等を含め、高い評価のコメントが寄せられた。図2は、「3次元CAD設計講座」の様子である。
人材育成事業は、平成18年度から始めて、本年度で5年目となる。たくさんの教職員及び学生TAの協力はもちろんのこと、八代商工会議所や地場企業等の協力に支えられて継続している。準備等は大変であるが、地域への貢献であると同時に、TAとして参加する5年生・専攻科生たちのCAD技術修得の絶好の機会になっており、今後ともできる限り継続していきたいと考えている。


図3.「3次元CAD設計講座」の様子

参考文献

  1. 開 豊、宇野直嗣、田中裕一、井山裕文、山下徹、宮本憲隆:地域企業と共同した「人材育成事業」の取り組み、工学教育、第55巻(2007)、pp.67-73.