知能システム研究部

知能システム研究部主任 中島 栄俊

1. はじめに

本研究部では(1)知的移動ロボットに関する研究 (2)知的医療介護支援システムに関する研究 (3)高臨場感型遠隔操作システム (4)宇宙科学に関する研究 など幅広い分野における研究に取り組んでいます。ここでは研究部における最近の研究開発事例のいくつかを紹介させていただきます。

2. 活動内容

2.1 マスタースレーブ型CPM装置の開発

図1:MS型CPM装置

◆プロジェクトリーダー:野尻紘聖
外傷後あるいは手術後の関節に対して連続的に外力を加えて能動的に回復を目的としたリハビリ運動を支援する機器(CPM)の開発研究に取り組んでいます。本プロジェクトでは、肩関節リハビリテーション装置のほか、図に示す健腕(マスター)により患腕(スレーブ側)を他動運動させるマスタースレーブ型肘用CPM装置を開発しています。特に後者の装置では、インピーダンス制御を用いて操作感の向上を図ることに成功しました。

2.2 次元圧縮型確率ニューラルネットを用いた脳波識別の研究

図2:脳波識別実験の様子

◆プロジェクトリーダー:卜楠
ブレイン・マシン・インタフェースの実現には、脳波信号を精度よく識別する必要があります。複数チャンネルの脳波信号から得られた多種の特徴量をパターン識別に用いると入力が高次元化してしまい、識別器の学習が困難になると同時に学習時間が増大する問題があります。本プロジェクトは入力次元の圧縮機能を有する確率ニューラルネットを提案し、脳波信号の識別手法について研究しています。

2.3 手書き動作アシストシステムの開発

図3:習字アシストシステム

◆プロジェクトリーダー: 柴里弘毅
振戦とは筋肉の収縮、弛緩が繰り返された場合に起きる不随意のリズミカルな運動のことです。生理的振戦は誰にでも起こり得、例えば、手を一杯に広げたとき手の先がかすかにふるえる現象は、多くの人が経験します。振戦については、リハビリや治療効果の客観的評価のための定量化や解析研究などは行われていますが、患者を支援する技術報告はほとんど報告されておらず、本研究では、振戦患者の生活の質改善を目標にした書字アシストシステムと筆跡の平滑化に関する技術に関する研究を行っています。

2.4 スーパーコンピュータによる元素の起源に関する研究

図4:超新星爆発の流体力学計算結果

◆プロジェクトリーダー: 藤本信一郎
本研究テーマの目的は『様々な元素がいつ、どこで、どのようにして作られたのかを明らかにする』ことです。具体的には、(1)流体力学計算により天体に付随する高温・高密度プラズマの状態を理論的に調査、(2)流体計算に基づいてプラズマ中の元素組成を計算、(3)その結果と観測値とを比較することにより宇宙における元素の起源を明らかにすることを目指しています。これらの研究を行うためには大規模な流体力学計算には高速なコンピュータが必要不可欠です。現有するワークステーション群および他研究機関のスーパーコンピュータを数日から数週間用いて並列計算しています。1日あたり数GBという膨大な計算出力を確認・理解するために可視化ツールを開発し、日々計算・解析を行っています。

2.5 換気性能を有する窓の防音ユニット内の音響伝搬に関する研究

図5:理論解析モデル

◆プロジェクトリーダー: 西村勇也
熱帯地域に属する諸国では、近年の著しい経済発展に伴う道路交通騒音が深刻化しています。しかしながら、住宅用窓の構造としては、換気性のみを有する観音開き構造が主流となっています。この構造により、外来騒音は換気孔を通過して居住空間に伝搬してきます。本研究では、従来の換気機能を生かしながら騒音を低減できる防音窓の開発を行っています。

3. おわりに

本研究部では、以上で紹介したプロジェクトの他に、人間-機械系における人間の制御特性補償器(コラボレータ)に関する研究、健康生活を支援するレシピ提供システム開発、運動視差を用いた仮想空間提示システム開発などにも取り組んでいます。また、基盤技術である組込みシステム技術を駆使し様々な共同研究や受託研究、技術相談などあらゆる産業界をはじめとする社会の要請にお応えできるよう努力してまいります。

4. 業績一覧

    1. 野尻,鍋島,柴里,大塚,モーションキャプチャシステムを用いた物体の動作分析事例,熊本高等専門学校 研究紀要 第3号,pp.63-68(2011).
    2. “Explosive nucleosynthesis in the neutrino-driven asphericalsupernova explosion of a non-rotating 15msun star with solar metallicity”, Shin-ichiro Fujimoto, Kei Kotake, Masa-aki Hashimoto, Masaomi Ono and Naofumi Ohnishi, Astrophysical Journal誌738 巻1 号61-75 頁 (2011 年 8 月 )
    3. “Explosive nucleosynthesis in neutrino-driven, zero-metal supernovae”, Shin-ichiro Fujimoto, Masa-aki Hashimoto, Masaomi Ono, Kei Kotake, Proc. Explosive Ideas about Massive Stars – from Observations to Modeling 2011年8月10-13日 (Stockholm, Sweden)
    4. 書字のアシストについて,第2回くまもと福祉情報教育フォーラム, p.23-24,柴里弘毅
    5. 早志,平松,芝軒,島,卜,栗田,辻, 判別成分分析に基づく新しい次元圧縮型リカレント確率ニューラルネット, 第12回計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会論文集, pp. 559-562, 2011.
    6. 特許第4774512号「出力制御装置」宇佐川毅,苣木禎史,松尾浩太郎,中島栄俊,2011年7月