回路とシステム研究部

回路とシステム研究部主任 大田 一郎

1. はじめに(研究目的と概要)

本研究部では、いろいろな用途の新しい電源回路の研究開発を行っています。具体的には考案した回路について、(1) CADを用いた回路設計・基板設計、(2) 汎用の回路解析ソフトhspiceを用いてのシミュレーション、(3) 基板加工機を用いた回路の試作、(4) 実験による試作回路の評価などを行っています。

 

2. 活動内容

現在までに、スイッチトキャパシタ(SC)回路を用いて直流出力や交流出力の各種のコンバータを開発し、出力電力は数Wから数百W程度で、電力変換効率は80%以上が得られています。また、用途別の電源として、エレクトロルミネッセンス(平面発光体)、蛍光灯、メタルハライドランプ等の電子点灯回路も開発しています。

試作した|C電源の外観 試作した送電線の計測用 非接地電源装置 開発中のバッテリー延命回路と その評価試験システムの外観
①試作したIC電源の外観
(5mm角チップ、1W出力、80%)
②試作した送電線の計測用
非接地電源装置
③開発中のバッテリー延命回路と
その評価試験システムの外観
研究テーマ 研究内容 担当教員
①スイッチトキャパシタ変成器を用いた超小形軽量電源回路とその集積化に関する研究 スイッチトキャパシタ変成器を用いて色々な用途の電源回路を設計・試作・評価している。また、VDEC(東京大学大規模集積システム設計教育研究センター)や共同研究の企業で実際にICチップを製造して、実験により試作チップの評価も行っている。 大田一郎
寺田晋也
②高圧送電線の計測用非接地電源装置の開発 高圧送電線の電流や電圧からエネルギーを得て、非接地の計測回路に必要な直流低電圧に変換する電源装置を開発している。 大田一郎
上杉一秀
③バッテリー延命装置の開発 鉛蓄電池において、電極に付着し電池寿命を縮める最大要因となっている硫酸塩結晶(サルフェーション)を、パルス電流により除去する新しい回路とその試験装置を研究開発している。 大田一郎
寺田晋也

本研究部は上記の教員の指導のもと、専攻科生3名、本科5年生(卒研)4名、本科4年生(創造実験)5名が各自の研究テーマで、新しい回路の設計・試作・評価を行っています。複雑な回路を間違いなく回路図から基板設計して、加工できるようにするため、殆どの行程をパソコンとワークステーションで行えるようにしています(下の写真と主要設備参照)。まず、回路設計したあと、回路シミュレータhspiceで動作を確認して、次に、基板設計ソフトAltium Designerを用いマルチディスプレイパソコン上で設計します。設計した基板データ(ガーバーファイル)を基板加工機に送り、両面銅薄基板に穴開け、線引き、剥ぎ取りを行います。また、穴開けした内面はメッキ装置で銅鍍金します。次に、部品を穴に挿入して、半田槽に浸けると試作回路が完成します。
http://www.te.kumamoto-nct.ac.jp/lab/oota-lab/public_html/PR/kenkyukizai_j.html参照)

試作した回路はデジタル電力計で一度に6チャネルまでの電圧、電流、電力を自動測定して特性をグラフ化します。得られた成果は4.の業績一覧に示すように国内外の学会で口頭発表や論文発表しています。また、試作回路などは、セミコン・ジャパン、産学官連携推進会議展示会、異業種交流・新連携フォーラム九州大会、九州ブロック産官学連携ビジネスショウなどに出展しています。

2画面パソコンによる回路設計 基板加工機とメッキ装置 ネットワーク計測システム

主要設備

・基板加工システムDFM-400、スルーホールメッキシステムOP-912、角型ハンダ槽POT-350C
・パソコン12台、ワークステーション2台、大規模集積回路設計ツールhspice, SX9000
・ネットワークアナライザ4395A、ディジタルスペクトルアナライザ、ロジックアナライザ
・ディジタルオシロスコープ、差動プローブ、電流プローブ、高電圧プローブ
・直流および交流用電子負荷装置、4象限バイポーラ電源、直流高圧電源、ディジタル電力計
・アナライジング交流電源、ソースメジャーユニット、ウェーブフォームジェネレータ
・シグナルジェネレータ、ファンクションジエネレータ、任意波形発生装置、サーモビュア

 

3.おわりに

昨年度、校舎棟改修工事が終わり、新しく快適な研究室で研究開発を行っています。また、継続して重点化研究「スイッチトキャパシタを用いた電源の超小形化・高効率化に関する研究開発」が採択され、基板設計ソフトAltium Designerを10ライセンス、最新のパソコンで使えるようになりました。今後も、学会発表や特許を通して、社会に対して技術貢献できる研究を継続し、製品化を目指します。

 

4. 業績一覧

    1. 大田一郎,デジタル・パワーアンプへの応用も可能なディジタル選択方式スイッチト・キャパシタ電源の設計,グリーン・エレクトロニクスNo.7(トランジスタ技術 SPECIAL増刊),CQ出版株式会社,pp96-106 (2012.1).
    2. 藤崎光,寺田晋也,江口啓,大田一郎, 平滑キャパシタが不要なスイッチトキャパシタデジタルアンプについて,第19回電子情報通信学会九州支部学生会講演会, no.C-22, (2011.9)
    3. 莟邦寛,寺田晋也,江口啓,大田一郎, デジタル選択方式スイッチトキャパシタ電源の出力抵抗の解析について, 第19回電子情報通信学会九州支部学生会講演会, no.C-30, (2011.9)
    4. 寺田晋也,大田一郎,DC/DC変換器及び電源モジュール,特願2011-168783号,(2011.8)
    5. 寺田晋也,平湯宗人,江口啓,大田一郎, 降圧比を可変できるスイッチトキャパシタプログラマブルコンバータ,
    6. 第24回回路とシステムワークショップ, pp.322-327, (2011.8)
    7. 大田一郎, 高効率スイッチトキャパシタ電源回路, 第26回 スイッチング電源技術シンポジウム, pp.1-22, (2011.7)
    8. K.Eguchi, S.Pongswatd, K.Tirasesth, H.Sasaki, I.Oota, and T.Inoue, A switched-capacitor- based serial DC-DC converter using clean energy power supplies, International Journal of Innovative Computing, Information and Control, vol.7, no.6, pp. 3485-3498, (2011.6)
    9. K.Kuwamoto, S.Terada, K.Eguchi, and I.Oota, A new DC-DC converter using a digital-selecting type switched-capacitor, The Fourth International Symposium on Intelligent Informatics (ISII2011), pp.3631-3637, (2011.5)
    10. K.Nabeta, S.Terada, K.Eguchi, and I.Oota, A novel type digital power amplifier using a switched-capacitor, The Fourth International Symposium on Intelligent Informatics (ISII2011),pp.3639-3645, (2011.5)
    11. S.Terada, K.Eguchi, and I.Oota, Ideal analysis of switched-capacitor ac power supply by difference among various methods, The Fourth International Symposium on Intelligent Informatics (ISII2011), pp.3647-3652, (2011.5)

*過年度の研究成果はhttp://www.te.kumamoto-nct.ac.jp/~oota-i/gyouseki-j.htmlを参照.