校長告辞(新入生へのメッセージ)

2018.04.05 2019.04.10

 熊本高等専門学校の新入生の皆さん、入学おめでとうございます。
 
 ご家族の皆様をはじめ関係者の皆様も本日は、誠におめでとうございます。
 
 本日、多数のご来賓の方々にもご列席頂きまして、ここに平成30年度の入学式を挙行できますことは、校長として喜びに耐えません。
 
 私は、今年度から熊本高等専門学校の校長に着任しました荒木啓二郎と申します。入学した皆さん方と同じ熊本高専の新入生です。
 
 そこで、熊本高等専門学校の沿革を一通り見ておくことに致します。
 
 熊本高等専門学校には、皆さんご承知のように熊本キャンパスと八代キャンパスの2つのキャンパスがあります。
 
 ホームページに掲載されておりますが、熊本キャンパスは、何と昭和18年 (1943年) に財団法人熊本無線電信講習所として設立され、昭和24年 (1949年) に熊本電波高等学校と改称され、昭和46年 (1971年) に国立学校設置法の一部改正により、熊本電波工業専門学校となりました。平成16年 (2004年) に独立行政法人国立高等専門学校機構が発足して、独立行政法人国立高等専門学校機構熊本電波工業高等専門学校となりました。
 
 一方、八代キャンパスは、昭和49年 (1974年) に八代工業高等専門学校として設置されました。平成16年 (2004年) には、熊本キャンパスと同様に、独立行政法人国立高等専門学校機構八代工業高等専門学校となりました。
 
 当時、全国に55校ありました国立高等専門学校のうち、熊本を含む4地区の高度化再編が行われて51校となり、平成21年 (2009年) 10月に独立行政法人国立高等専門学校機構熊本高等専門学校が設置されて、翌平成22年 (2010年) の4月から新たな熊本高等専門学校の1期生が入学しました。
 
 従いまして、本日入学式を迎えた皆さんは、熊本高等専門学校の第9期生ということになります。
 
 熊本高専は、現在では、それぞれのキャンパスに3学科、1専攻の合計6学科と2専攻を持ち、また、3つのセンターを有しております。
 
 熊本高専に限らず、高専の卒業生は、非常に評判が良くて高く評価されています。企業に居ます私の知合いは、皆、口を揃えて高専出身者が優秀だと言っています。また、私の前任の大学にも、学部3年生への編入や修士課程へ入学してきた高専出身者は優秀で元気良く勉学や研究に励んでおります。私がこの度熊本高専に行くと知った企業の知合いからも大学の知合いからも、優秀な高専生を沢山自分の所に送り込んでくれ、と言われました。
 
 これまで国立高等専門学校が、実践的高度技術者を育成し、社会に輩出して、我が国の産業界を支えて、技術立国日本の確立に大いに貢献して来たことは広く知られているところです。それだけ社会の期待も大きいと言えます。
 
 だからといって、皆さん方は将来の進路の心配をしなくて良いと言う訳ではありません。就職が無条件に保証されているという訳ではないことを頭において、先輩たちが努力し実践してきたのと同様に、いや、むしろこれからの時代では、先輩たち以上にもっと勉学および研究に精進してください。
 
 社会は急激に変化しており、高専生に対する期待もより高度により高くなってきています。実践的な技術、知識、経験のみならず、高い教養と見識、また、国際性を身に付け、現代社会を牽引するイノベーション、革新を導くことが要求されています。
 
 特に国際的に活躍するには、自分自身のアイデンティティを持っていることが必要だと考えます。独自性、個性、自分らしさ、とも言えますが、それは、まさに一人一人の生まれ育った環境や経緯に依存します。とりわけ、自分の家庭、故郷、母国、母校というのがアイデンティティを形成する上で、重要な役割を果たしていると考えています。
 
 これからの5年間、あるいは専攻科まで含めますと7年間の若い感性と柔軟性に富んだ時代を、この歴史的・文化的に豊かで、自然に恵まれた熊本高専で送って、じっくり成長して頂きたいと望んでおります。
 
 個人的には、「逞しく、かつ、しなやかに」ということを念頭において校長の役割を果たしたいと考えております。すなわち、既に評価の高い実践的な技術力だけではなく、歴史や文化、哲学にも造詣があり、国際性を有して、多様性や柔軟性を併せ持って新たな社会や価値を創出するイノベーションを導出する活躍を期待しております。
 
 私は論語にあります「学びて思わざれば、則ち罔(くら)し、 思いて学ばざれば、則ち殆(あやう)し」という言葉を好んでおります。
 
 『書物等から学ぶだけで、自分自身で考えないのは、本物の本質ははっきりしない、一方、自分一人で考えるだけで、先人や書物などから学ぼうとしないのは、独断に陥って危険である』
 
 高専という場では、基礎と実践、理論と応用、そして、前述のように、「逞しく、しなやかに」というような解釈に繋がると思います。
 
 高専では皆さんを学生と呼びます。専門性を有する高等教育を受ける主体性をもった学生であるという自覚をもって、熊本高専で大きく成長してください。期待しています。
 
 本日は、熊本高専への入学、誠におめでとうございます。
   

平成30年4月5日
熊本高等専門学校
校長 荒木 啓二郎